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この会社に就職して営業部に配属されて、敏生は普通に仕事をしているだけなのに、周囲は敏生のことを〝デキる人間〟だと見るようになった。女子には興味がない態度は変えていないのに、その頃から、いわゆる〝モテる〟状態になったような気がする。
そして、バレンタインの度にたくさんのチョコをもらった。他の部署の名前も顔も覚えていない女性からも。……だけど、その女性の中に結乃はいなかった。
チョコをくれるどころか、結乃の方からも話しかけてくれることもなく、もうすぐ3年が経とうとしていた。
強いて進展したと言えば、少し言葉を交わせるようになって、メールアドレスを交換したことくらい。
それも、つい先月のこと。インフルエンザで欠勤者が多く、敏生のいる営業1課の業務が立ち行かなくなりそうになった時、総務の方から結乃がヘルプに来てくれたのだ。
この奇跡のような出来事は、敏生に少しだけ心境の変化をもたらした。もっと結乃と親しくなりたいという、きわめて敏生らしくない願望が湧いてくる。
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