約束

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そもそも、何を都合のいい期待していたんだろうと、敏生は思い直した。 ただの知り合い程度の自分に、結乃がチョコをくれる理由がない。結乃が実は自分のことが好きで、バレンタインに告白してくれるなんて、妄想するにもほどがある。 相手が何かしてくれるのを待ってても、何も変わらない。現状を変えたければ、自分から動いて変えようとしなければ…! だけど、河合や北山のように、自分からチョコをねだりに行くなんて…。 ――…俺には、無理だ…。っていうか、俺がそんなことしても、『気持ち悪い』だけだろ…? いずれにしても、バレンタインに臨む敏生の憂鬱は深くなった。仕事をバリバリこなして無心になっていなければ、やってられなかった。 そうやって仕事に励んで、いつものように帰途に就いたバレンタインデーの2日前。駅のホームに到着していた電車に駆け込んだ時のこと、 「あ…!」 偶然結乃と出会えてしまった。 〝知り合い〟同士だから、一緒にいるのは不自然ではないはず…。敏生が空いていた席を見つけると、二人は並んでそこに納まった。
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