約束

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でも、敏生は結乃を意識してしまって、あいも変わらず緊張してしまう。すると、結乃の方から話しかけてくれ、上ずった意識のまま、とりとめのない会話をした。 しかし、会話が途切れると、敏生は内心焦りだした。こんな時、どうやって時間をつなげばいいのだろう…? チラリと結乃の様子を窺うと、とても穏やかな表情で、電車の走るリズムに耳を傾けているようだ。敏生も同じように、心を落ち着けてみる…。 すると、遠くから見つめていた時には感じられなかった結乃の息吹が、敏生の中に染み込んでくる。彼女の細い指、彼女の息遣い、彼女の匂い――。 敏生がそれらをしみじみと噛み締めていた時、結乃の少し焦ったような声が響いた。 「あの…!芹沢くん…って。いつもこんなに遅くなるの?」 敏生の胸がドキンと大きく脈打った。
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