予測不能

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その次の日、敏生はそれこそ分単位で動き回り、必死で仕事をこなした。その鬼気迫る様子に、職場の同僚も課長でさえも、驚いているようだった。でも、そんなことは気にしてられない。明日は何としても、定時に帰らなければならない。 だって、明日はバレンタインデー。もしかしたら結乃からチョコをもらえるかもしれない…。 そう思うと、敏生の体は勝手に動いて、もうジッとしていられなかった。 そして、バレンタインデー当日。 この日は、女性に会う度にチョコを渡される。午前中、取引先に訪れる度にチョコは増えていき、カバンに入らないほどになった。 会社に帰ってデスクで仕事をしているときには、何度も立ち上がり頭を下げる。トイレに行けば、その途中で呼び止められる。デスクの上にメモが置かれていたり、社内メールにメッセージが送られてきて、人気のないところに呼び出される。 こうやって、何度も仕事を邪魔されることは初めから計算済みだとはいえ、 ――バレンタインなんかに浮かれてねーで、ちゃんと仕事しろよ!! と、内心は本当にうんざりしていた。
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