バレンタインの憂鬱

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『義理なら、余計なことすんなよ。こっちは迷惑してんだよ』 と言ってやりたいけど、大人として配慮のかける言動はしたくないから、一応爽やかな態度で受け取っておく。でも、敏生のイライラは募る一方だ。 いや、義理なら義理で、それで切り捨てられるからまだいい。義理ではない〝本命〟というものが混じっているから、本当に厄介だ。 社会人になった最初の年は、まだ殊勝だったこともあって、律義にホワイトデーに〝お返し〟なるものをしていた。すると、何人かから困った反応が返ってきた。 チョコに込めた本気の想いに、敏生が応えてくれたと思い込んだのだ。そう言えば、カードが添えられていて、そこに『好きです』なんて書いてあったような気もしたが…。 しばらくすると、『彼女にしてくれたのに、なんでデートにも誘ってくれないの?』と責められたり、突然資料室に連れ込まれて、キスをせがまれたりした。 その都度、敏生は謝り、なんとか誤解を解いて相手も納得してくれたが、 ――女って、怖いな……。 そう思い至って、辟易した。
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