バレンタインの憂鬱

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入社二年目は一年目の教訓を生かして、一切お返しをしないことにした。すると、これに納得のいかない一部の女性たちがいたらしい。 「フツーは、ちょっとしたお返しくらいするもんじゃないの?」 他の男性社員と比べて敏生のことを〝不実〟だという陰口は、敏生の耳にも入ってきていた。 『文句があるなら、一方的に押し付けてくるなよ』 言い分なら、敏生の方にも山ほどある。陰口を言ってた奴を見つけ出して、論破したい気持ちが募ったが、そんな大人げないことはしたくない。そもそも、〝義理〟に見返りを求めてくるような奴を相手にするなんてバカらしい。 だけど、そんなこともあって、敏生はこのバレンタインという国民的行事に辟易し、本当に嫌いになった。
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