第1章

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更に、災難は続く。新人である杉本が切手を無くしたというのだ。そんなもの、と思うかもしれない。だが、その切手代も税金により賄われているため馬鹿に出来ない事件なのだ。 課の全員で探しまわるも見つからず、新しい切手を貰うことになったのだが。いかんせん、この杉本、全く反省していないときた。新人の杉本の担当は晃であったので、叱るのも晃の仕事だ。晃自身、怒る気持ちもあったのだが、叱るのが苦手な晃には苦痛でしかない。 そんなこんなで、色々と災難な1日だったのだ。 「それにしても、寒いなあ。」 都会ではあまり見ることのない雪景色。よく見ると月あかりが雪に反射して、青く光っている。もうすぐ通る公園には足跡のない雪が積もっているのではないか、そしたら少しだけ足跡を残してみたいかも、なんてことを考えて彼は歩いていく。 「あれ?」 その公園には、誰かの足跡があった。そして、その先には人。 人が、ベンチの上に座っていた。こんなに寒い夜に? 近づいてみると、小さい。中学生くらいの男の子だろうか。制服を着て、泣いていた。青白い顔をして。月を見ながら、1人。 その姿を見て、記憶の鐘が小さく音を鳴らし始める。晃はその子どもにどこかで会ったことがあった。
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