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確か、遠縁にあんな子がいたような……?さらさらとした漆黒の髪色に壊れそうなほど華奢なからだ。病的なほど白い肌色。そう、名前は……。
「奏くん?」
少年は、涙を拭きながらゆっくりと振り向いた。晃を視認し、まるで吸い込まれそうなほど透き通った琥珀色の瞳がわずかに見開く。
「……もしかして、晃さん?」
「うん。こんばんは、奏くん。」
「こんばんは。」
「どうしてこんな所にいるんだい?風邪をひいてしまうよ。」
「えっと……その……あの……。」
奏は何かを言いかけてまた口を閉じる、ということを何度も繰り返した。
「……特に、理由はありません。」
奏の様子から、〝特に理由がない〟わけではないことは明白だ。夜遊びをしている訳でもないし、ましてや彼は泣いていたのだ。なにかよっぽどのことがあったと考えるべきだろう。だからといって、彼から無理矢理理由を聞き出すわけにはいかない。どうするべきだろうか。
「とりあえず、家に来ないかい?」
「……え?」
「ここにいたら風邪もひいてしまうし、今はもう2時だ。奏くんになにかあってからじゃ遅いからね。」
「大丈夫です!慣れてますから!」
「慣れててもなあ……。じゃあ、俺の顔をたてるってことでどうかな。もしなにかがあったら寝覚めが悪いからね。」
「……。じゃあ、お邪魔してもいいですか?」
「何も問題ないよ。早速行こう。」
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