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「着いたよ。入って。」
「お邪魔します。」
あのまま泣いている少年を見ていたくなくて、半ば強引に連れてきてしまったが。とりあえず風呂に入らせるべきだろう。雪の降る中、傘もささずに座っていたのだ。このままだと、風邪をひくことは一目瞭然だった。
「まず、風呂に入らないかい?」
「そうですね……。このままだと晃さんの家を濡らしてしまいます。」
「そうじゃなくて。さっきも言ったけど、風邪をひいてしまうよ。」
奏は、何故か困惑した表情を見せた。眉が少し下がり、首を傾げている。まるで、晃が奏を心配している理由が分からない、といったような顔であった。
「……そう、ですね。でも、晃さんが先に入って下さい。」
「どうして?」
「ここは晃さんの家です。なので家主である晃さんが先にお風呂に入るべきです。」
「そんなこと考えなくていいよ。もし、それでも俺が先に入るべきだと思うなら、俺のために先に入ってくれないかい?」
奏の眉がぐっと下がった。だが、風呂に入るべきは晃ではない。奏の方だ。普段はそこまで押しが強くない晃だがこの時ばかりは引く気配をみせなかった。
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