プロローグ

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プロローグ

今、思えば。 あの日、彼を一目見たときから惹かれていたのだろう。だからこそ、俺は、俗に言う不幸な人間だった。全てがきっと偶然で、でも運命じゃなくて。 あの日、君と出会ったのは。俺が、恋をしてしまったのは。俺と君の運命じゃあなかった。彼女と君の運命だった。きっと、それだけの話。それなのに、それなのに、こんなに胸が痛むのは何故だろう。美しかったはずのこの世界が、味気なく見えてしまうのは何故だろう。俺は、俺の人生に満足していたはずなのにいつからか何かが欠けてしまった。 年甲斐もなく、許されない恋だなんてしてしまったからか。でも、それも今日をもって終わりにするんだ。これ以上、この感情が醜くなる前に。俺から、溢れ出す前に。君に、恋をしていたなんて、バレないように。 君が出会ったのが、ただの優しい人であるうちに。
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