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「初雪だね。」
すっかり日が落ちて、暗くなった帰り道。冷たい空気で赤くなった頬で、君は笑う。君のお気に入りのキャラメル色のコートも、君に一番似合っている赤いマフラーも、段々と白く染められて、雪明かりに輝き始める。
「髪、ついてる。」
僕はそっと君の髪に手を伸ばす。君はぎゅっと目を瞑る。
「ほら、取れたよ。」
「ありがと。」
上目遣いは反則だ、などと思いながら、僕は点滅している青信号に目を移した。
「ねえ。」
立ち止まり、君は言った。
「来年も、雪、降るかな。」
「もう僕はいいかな。」
なんて、心にも無い返事をする。本当は、君が喜ぶなら、なんだっていい。それが雪なら何度だって降ってほしい。……凍った道を歩くのはあまり好きになれそうにもないけれど。
「こんなに綺麗なのに?」
「寒いじゃん。」
「…確かに寒いけど。」
君はそう言って手に息を吐く。来年の今頃、僕はその手を握ることが出来ているんだろうか。
意気地無しの僕が幼馴染なんて特権で、どうにか保ち続けている君の隣。恥ずかしくて口には出来ないけれど、僕は来年も、はしゃいでいる君と雪が見たい。
…きっとその時は、君にとって、幼馴染なんかよりもっと、特別な存在で。
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