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全ての騒動がひと段落ついた後、
武田は山崎から今回の騒動について報告を聞いていた。
「討ち取り3名、捕縛5名、逃亡1名。」
「逃げたのは?」
「桂小五郎。」
「チッ…またか。しかし、まずは大勝利。」
そこまで黙って聞いていた山南が口を開いた。
「武田くん。雨戸を3枚急ぎ用意して下さい。」
「はい?」
わけがわからないと言った様子の武田。
「いくら不貞の輩とはいえ、いつまでも亡骸をその場に晒しておくべきではない。」
何を言っているのか理解出来ないとばかりに言う武田。
「ハハッそんな事は長州のやつらに任しておきましょう。」
「いや、そこまでが我らの仕事です。」
有無を言わさないと言いたげな山南の表情に武田は従うしかなかった。
場所は変わって京の遊宴の場。
赤い着物を身に纏った禿(かむろ)を横に侍らせて
優雅に洗練された舞を踊るのは
すらりとした首筋に凛とした顔立ち、まさに最上位の遊女と言った貫禄のある
深雪太夫(みゆきだゆう)である。
ー♪ー♪ー
踊りを終えてもなお
一つ一つの所作に品があり、自然と客から拍手が送られる。
パチパチ
太夫は踊りが終わると客の話を聞いたり
お酒のお酌をするなど忙しく接待していた。
そんな中、一人の芸妓が申し訳なさそうに深雪太夫に話しかけて来た。
「また、新撰組が…長州のお侍さんと…」
太夫は心配そうに話の続きを聞いた。
そんな太夫の様子を見て、芸妓はニッコリと笑いながら
「近藤せんせはご無事やそうです」
それを聞いた太夫はホッとした表情で客への接待に戻っていった。
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