全盛

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_黒谷金戒光明寺     会津藩本陣_ 会津藩の本陣の置かれている寺の中を、会津藩公用方広沢富次郎が足早に歩いていた。 ある部屋につくと、その部屋の真ん中に座った人物に向けて報告した。 「新撰組が京の旅館におきまして、不貞の浪士数名を捕縛いたしました。」 その報告を聞く、朗らかでありながら藩主の威厳を漂わせる人物。 会津藩藩主であり、将軍から京都守護職をも賜っている 松平容保(まつだいら かたもり)公だ。 「近藤に、働き見事と伝えろ。」 「かしこまりました。」 「新撰組。誠によく働いてくれる。近々また会うてみたいものじゃ」 そう言うと彼は満足そうに顔を綻ばせた。 新撰組臨時会議場になっていた店では、 会計方である河合が店主と店の女将に謝礼金としての金貨と、粗品を渡していた。 「お世話になりました。それとこれ。つまらないものなんですが。」 すると店主が戸惑いながらも 「あの、お仲間の人には、握り飯を…」 という。 それを聞いて、新撰組の財布事情を知っている河合は 苦い顔をしながらも答える。 「お、おいくらですか?」
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