始まり

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桂が蕎麦屋を後にし、道を歩いていると 「おーい桂さーん!」 と後ろから近藤の声が聞こえた。 振り返ると近藤と土方がこちらに向かい走って来た。 「何か?」 桂がそう言うと 「うちは確かに貧乏道場だがあなたに奢ってもらう筋合いはない。受け取ってください。」 と近藤が先ほど桂が蕎麦屋に支払った金を差し出して来た。 まだそんなことを言うのかと面倒になって来た桂だが 「ハハハハ…では出世払いということで」 と言うが近藤も桂も一歩も引かなかった。 「受け取ってください!」 そろそろしつこいぞど言わんばかりに桂が言い放った。 「断る!」 いつも朗らかな印象を与える桂の そんな風に声を荒げる姿を見たことがない近藤たちは 一瞬ひるむが、一歩も引こうとはしない。 そこで桂は何かを考えついた様に言った。 「ならこうしましょう。私に渡した事にして、 あそこにいる物乞いに恵んでやるというのは」 あくまでも桂は金を受け取る気がないらしい。 しかし近藤も桂に恩を売られるつもりはない。 「だったら金を受け取ってから、あなたが恵めばいい!」 「何度も言わせるな!私は受け取らない。」 水掛け論では埒があかないと近藤は思い切った行動にでる。 「それならば致し方ない。」 そういって持っていた金を横にいた土方に渡し、 刀に手をかけた。 桂も一瞬身構えるが、近藤は持ってた刀さえも土方に渡し、 浴衣の上半身の部分だけ脱ぎ、 「来い!」 どうやら相撲で勝負をつけようと言うことなのだろう。 先ほど桂に”物乞い”呼ばわりされた人物が近藤たちと桂の間に割って入って来た。 「おいおいおいおい。二人ともええ加減にせぇやぁ。」
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