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店の襖を勢いよく開けて入って来たのは、新選組勘定方・河合耆三郎(きさぶろう)。
河合は持って来た箱を開けると、その中には兜や鎖帷子、そしてだんだら模様が入った浅葱色の羽織などが入っている。
「羽織、配ります」
そういって隊士各々に防具を配り始めた。
集まった全員が装束を身につけ、作戦会議をしていると、
突然扉が開き、新選組総長・山南敬介(やまなみ けいすけ)が
「すみません。道を一本間違えた。」と物腰柔らかに言って入って来た。
「軍議始まってますよ」と井上に言われ、
申し訳なさそうに、しかし総長としての威厳を携えたまま山南は席に着いた。
山南と共に遅れて入って来た
新選組二番組組長・永倉新八(ながくら しんぱち)には、何も言わなくとも河合から羽織が渡される。
一方、同じく遅れて入って来た男が
「あの、私の羽織は…?」
と河合に聞くと
「え?」
「…」
というように、少し影の薄いこの男は新選組八番組組長・藤堂平助(とうどう へいすけ)
軍議には参加せず槍の準備をしているのは、新選組十番組組長・原田左之助(はらだ さのすけ)だ。
軍議が始まり、まずは土方が指示を出す。
「敵は恐らく10名前後だろう。島田は尾関と共に表で待て。あとは皆で踏み込む。」
そこに山南が
「室内での戦闘はできる限り避けたほうがいいでしょう。」というと
土方は山南を睨みつけた。
山南は怯まず
「廊下がかなり入り組んでいる。」と続ける。
するとすかさず便乗するように武田が
「確かに、大勢で踏み込むのは危険ですね」と続けるが、
土方はわかっていた。
武田は他の副長助勤に比べて腕が立たない。そうなると全員で出撃し、戦闘時に武田は自分自身に害が及ぶと考えたのであろう。
そして山南が案を提出する。
「敵をあえてこの裏木戸から表へ逃し、裏の川原で叩く。」
それもいい案だと思うが
土方は山南の案に乗っかるのでは腹の虫が治らないのかもっといい案だと思ったのか、
「二手に別れよう。局長と沖田、永倉、藤堂は切り込み、後の隊士は表で待ち伏せろ。俺と原田、源さん、斎藤や他の隊士は別ルートからもう一つ別の旅籠をつぶしてから池田屋に向かう。」と言った。
一人を除いて全員と目配せをした土方は、その一人に声をかける。
「斎藤。聞いてるのか」
すると斎藤は土方の方を見、小さく返事をした。
…プチ歴史解説…
兜や鎖帷子 戦の時に使う防具 かぶと くさりかたびら
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