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「あぁ」
この男は、新選組三番組組長・斎藤一
隊の中でも一、二を争う程の剣の使い手である。
「以上だ。後は山崎達の報せを待て。」土方がそう言うと軍議は終わり、その場にはピリピリとした緊張が張り詰めていた。
京の宵街に流れる独特の音楽を聞き流しながら
笠を被った男が歩いていた。
人とすれ違うだけでも挙動不審のように見える男は、
下を向きながら早足で歩きある店の前に止まり、用心深く店の周りを見渡しながら店に入っていった。
この男こそ長州藩士・桂小五郎である。
そしてその様子を見ていた山崎達監察はあの男が桂だと確信した、若手の監察が
「山崎さん」と声をかけるが、返事がない。
周りを見ると、すでに山崎はいなくなっていた。
軍議終わり、ピリピリとした空気の中で、そんな空気をものともしない青年がいた。
「ねぇねぇ源さん聞いてよ」
語尾に音符マークが付きそうな勢いで話しているのは沖田総司。
隊内一の剣の使い手であり、斎藤一と肩をならべる実力者である。
当の本人は戦いをゲーム感覚で楽しむ謂わゆる天才剣というやつだ。
「はいはい」
そんな総司の話を聞いているのは、近藤勇の兄弟子、井上源三郎だ。面倒見がよく物腰柔らかでみんなから慕われている存在だ。
「最近ね、どんなに人を斬っても汚れない方法を考えたんですよ」
楽しそうな笑顔でとんでもない事を言う。
それに井上は質問をする。
「返り血は?」
確かにごもっともな質問だ。拳銃のない時代、人を斬ればどうしたって血が飛ぶ。
満面の笑みでそれに総司がジェスチャーを踏まえて答える。
「ふふん♪斬ったと思ったらサッと後ろに引くんです。こうやって」
すると井上は
「そんな風にうまく行くかな」
と答えると、総司は
「とりあえず今日やってみようと思って」
まるで何かスポーツの練習のように言う。
そんな会話を聞いてた土方は、
「総司。相手を倒すことに専念しろ。」
「だってぇ、汚れちゃうとそのまま飲みに行けないじゃないですかぁ」
ふてくされ気味に言い返すが、話はそこで終わった。
…プチ歴史解説…
長州 今の山口県の辺り
藩士 江戸時代、各藩に仕えた武士やその一員を表す。
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