全盛

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…プチ歴史解説… 尊王攘夷(そんのうじょうい) 天皇を敬い、外国を排除しようとする思想をもった者  御所(ごしょ) 天皇の住む場所 帝(みかど) 天皇陛下と同義 一橋慶喜 第15代将軍徳川慶喜ともいう 京都守護職 江戸幕府に設けられた役職の名前 動座(どうざ)この中では、天皇を長州へ動いてもらうという意味だが、実際は連れ去ると言ってもいい。 同じ時、河合と藤堂が羽織を探していると、藤堂の羽織を着ている者がいた。 「あ、これこれこれこれ。」 河合が見つけた。 「すみません、それ私の羽織なんですけど」 藤堂が話しかけたのは、原田左之助だった。 「あんたのはこれ!」 河合がそう言って羽織を渡す。 すると原田は 「あっ悪りぃ悪りぃ」といって、本当に気づいていなかったようだ。 そんな時、慌てた様子で入って来たのは監察の山崎だった。 「桂が入りました。」 それを聞いた近藤は力強くうなずき、待機していた店から隊士達を連れて出発した。 桂が入って言った店というのは、池田屋という旅館で、長州藩や土佐藩の尊王攘夷志士たちが作戦会議や密談をおこなうと共にそのような志士達を匿っている場所であり、新選組にとって敵の本拠地だった。 そんな池田屋で尊攘志士と密会をしていた桂はその作戦の内容を聞いた。 「祇園祭前の風の強い日を狙い、御所に火を放ちその混乱に乗じて帝(みかど)をお救い致し、将軍一橋慶喜(ひとつばし よしのぶ)と、京都守護職松平容保(きょうとしゅごしょく まつだいら かたもり)を暗殺し、帝を長州へご動座いただく。」 しかし桂は 「私は承知出来ない。京の街に火をかければ多くの民が家を焼け出され露頭に迷うこととなる。」 だんだら羽織が夜の京を練り歩き、 池田屋に到着した。 到着するや否や 近藤は覇気強い声でこう言った。 「新選組だ。御用改めである。手向かい致せば容赦なく切り捨てる」 ”新選組”と聞いてここで働いている者達は突然の事態に右往左往する者もいれば、叫んで逃げ出す者もいた。当然だ。”新選組”というのは京都の治安維持のための部隊といえば聞こえはいいが実際は血も涙も無い人斬り集団だ。京の人間からすれば恐怖の対象でしかない。
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