0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
空は飛べないけど
「オレは鳥になる!」
そう叫んでアタルは屋上から飛び降りた。
思いっきり助走をつけて翔んだアタルは、確かにそのとき空と太陽の一部になった。
しかし、それはほんの一瞬のことで、太陽はアタルを地面へと叩き落とす。
まるで、翼を失ったダイダロスの子のように。
アタル――馬鹿だよ、お前は……。
大馬鹿だ。
「うぇ~ん。痛いよぉ、修ちゃ~ん」
生きてやんの……。
病院に見舞いにきた俺を見て、アタルは泣きじゃくりながら俺に痛みを訴えてくる。
「あたりまえだ、ぼけ! 四階から飛び降りて、皹だけですんだのは奇跡的なんだぞ!」
「うにゅう」
俺が本気で怒鳴ると、体をシュンと丸めるアタル。
「今度、ばかりは本気でっ本気で――」
「ごめん、修ちゃん」
「…………」
アタルのごめんを聞き、俺は頭を抱えた。
「……もういい――」
俺はため息をついて、ベッドの脇にあったパイプ椅子に腰を下ろす。
日浦アタルは昔から変わった男だった。
幼稚園のときには俺の作った粘土のお団子を食べて腹を壊した。
最初のコメントを投稿しよう!