空は飛べないけど

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空は飛べないけど

「オレは鳥になる!」  そう叫んでアタルは屋上から飛び降りた。  思いっきり助走をつけて翔んだアタルは、確かにそのとき空と太陽の一部になった。  しかし、それはほんの一瞬のことで、太陽はアタルを地面へと叩き落とす。  まるで、翼を失ったダイダロスの子のように。  アタル――馬鹿だよ、お前は……。  大馬鹿だ。 「うぇ~ん。痛いよぉ、修ちゃ~ん」  生きてやんの……。  病院に見舞いにきた俺を見て、アタルは泣きじゃくりながら俺に痛みを訴えてくる。 「あたりまえだ、ぼけ! 四階から飛び降りて、皹だけですんだのは奇跡的なんだぞ!」 「うにゅう」  俺が本気で怒鳴ると、体をシュンと丸めるアタル。 「今度、ばかりは本気でっ本気で――」 「ごめん、修ちゃん」 「…………」  アタルのごめんを聞き、俺は頭を抱えた。 「……もういい――」  俺はため息をついて、ベッドの脇にあったパイプ椅子に腰を下ろす。  日浦アタルは昔から変わった男だった。  幼稚園のときには俺の作った粘土のお団子を食べて腹を壊した。     
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