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男の子は夜空を見上げていた。
──どうしてぼくのところにはユキがふらないんだろう。
男の子は不思議に思っていた。
お父さんやお母さん、先生に聞いても難しい話をされるだけで、男の子は理解できなかった。
春には桜が咲いて。
夏には海で遊んで。
秋には紅葉を拾って。
冬には雪が降って。
自然はそういうものだと、男の子は絵本で知った。
けれど。
男の子の住む地域には雪だけがなかった。
──どうして?
男の子は冬だと言うのに雪が全く降ってこない夜の空を疑問とともに見つめていた。
にゃおん……
すぐ近くで猫の声がした。
男の子は猫の姿を探す。
窓の外、置かれた木箱の上に、白い猫が一匹いた。
「こんばんわ、ねこさん」
男の子は白い猫に挨拶をした。
「まぁ、礼儀正しいこと。イマドキ珍しいわね」
白い猫はしゃべった。
男の子は目を見張って驚いた。
「ねこさん、しゃべれるの?」
「しゃべれるわよ。だってわたし、特別なネコなんですもの」
白い猫は得意気に言う。
「おそとはさむくないの?」
「わたしにはこれがあるから大丈夫」
白い猫はまた得意気に自分の毛並みを前足ですいてみせた。
「あなたは何をしていたの?」
白い猫がきく。
「なんでユキがふらないのかわからなくておそらをみてたんだ」
男の子は答える。
「あら、あなた、雪が見たいの?」
白い猫が首をかしげる。
「うん」
男の子は頷いた。
「そうなの。どんな雪がみたいの?」
聞かれて男の子は家の中から絵本を持ってきた。
「こんな雪だよ」
男の子は絵本を広げて白い猫に見せた。
「じゃあそれ、叶えてあげる」
「え?」
次の瞬間、男の子は雪の夜の景色にいた。
絵本が床に落ちる音が響いた。
続けて、家の中が騒がしくなる。
「これだからイタズラはやめられないにゃ」
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