世界を滅ぼすモノに。

災厄

　魔王は死んだ、勇者との激闘の末に。永きに渡りヒトを苦しめ続けてきた頑強で凶悪な悪魔は人間の手によって見るも無惨に殺された。

　勇者は仲間たちと勝利の喜びを分かちあった。そしてその日の夜の祝勝会で仲間の一人、魔法使いイザベラとの婚約を発表した。
　しかし未だ戦いは終わっていない。魔王が倒れたとは言え、魔物が全滅したわけではない。勇者たちの旅は終わらない。終わるわけにはいかない。

　魔王が死んだことは瞬く間に世界中の人々の耳に入った。人間は最大の脅威が去ったことに安堵した。そして一部の人間は新たな敵の存在を思い出し、その内のさらに一部は魔王を殺すべきではなかったと言い始めた。
　一年後、魔物を全滅させるよりも先に人間の国同士が戦争を始めた。

　勇者たちは魔物たちを倒す旅を中断し、人間を殺す役目を与えられた。魔王を倒した半年後のことだった。魔王を倒すまでは様々な魔物たちを殺してきた。巨大なトカゲ、鉄の爪を持つワシ、黒く醜い小鬼、人間のような姿の魔物もいた。
　しかし、今は全て同じに見える。どの敵も人間、人間、人間、人間･･････。魔王を共に倒した仲間は今となっては半分に減ってしまった。心を病んで戦線から離れてしまった。無理もない。勇者は彼らを羨ましいと思った。