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 誰にも悟られぬよう、シグルドは、ひたすら自分の心を殺していた。  そんなシグルドのもとへと。  午後の数刻、王子アルトナルが、より頻繁に訪うようになっていた。 「こう政務ばかりでは、身体が鈍ってしまう。シグルド、鍛錬の相手をせよ」  王子は、そんな風に朗らかに闊達に、まるで退屈しのぎの遊戯か何かのように、近衛の騎士たちの前でシグルドに呼び掛け、誘った。  だがひとたび、ふたりきりの場で剣を切り結べば、王子の気迫は悲壮だった。  受傷「前」と比して、自らの力に衰えるところがないか。  王子アルトナルはシグルドを、くどいほどに問い質す。  自ら振り下ろす太刀の重さや、機敏さ。  そして気概が。  前と同じに、「雄々しく」「勇猛」であるかと―― 「王子アルトナル、貴方様の太刀筋も胆力も、以前に増して充実なされております」  シグルドは、滴り落ちる汗を籠手の内側で拭いながら、王子にそう言い聞かせる。  幾度も、幾度も。  不意に、ガクリと王子が片膝を崩した。  剣先を地につき、アルトナルが、かろうじて自らの身を支える。  すかさず腕を伸ばしたシグルドの指先が王子の肩に触れた。  ビクリと、アルトナルが大きく肩を痙攣させる。     
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