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(5)  ――「昔のように」    なるほど、それはまさに、遠い遠い昔のことだった。  けれどもシグルドには、すぐ、その意味が分かった。  アルトナルもシグルドも、まだ幼く。  シグルドが兄、アルトナルが弟。  そんな風に乳兄弟として共に過ごすことができていた、はるか昔。  その頃のことを指しているのだと。  シグルドの母親は、王子の乳母であった。  王妃ヘルカを早くに亡くしたがゆえ、アルトナルとシグルド、そしてその母との絆は深かった。  悪戯盛り。  アルトナルとシグルドが無邪気に遊び回れば、どうあれ責めは、すべてシグルドの負うところとなる。  そんなシグルドを「仕置き」から逃れさせるため、王子はしばしば、自室にかくまった。  無論シグルドが、表から堂々と王子の部屋に向かえば、すぐさま誰かに見とがめられる。  「かくまわれる」どころではなかった。  だから、密かに王子の部屋へと入るための「抜け道」を、幼いふたりは作り上げていた。  「昔のように」部屋に来いというのは。すなわち――  「その方法」で来るように。  王子が言わんとするのは、そういうことだと。シグルドも、すぐさま察し取った。     
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