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その刹那、王子の頬にふと、失望めいた影が走ったように見えたのは、シグルドの思い過ごしかもしれないし、そうではなかったかもしれない。
だがいずれにせよ、今一度シグルドを振り返った王子の表情は、笑顔だった。
そして、手にした盃を「そら、受け取れ」とシグルドへ投げつける。
それはごく薄くて繊細な玻璃細工の最高級品だったから、シグルドはきらめく盃を両手で必死に受け止めた。
めずらしくも慌てふためく騎士の様子に、アルトナルが声を立てて笑う。
そうやって、王子と騎士は、酒を酌み交わし始めた。
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