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そしてシグルドは、王子の寝顔を見つめる。
そこに、可愛らしいかった子供の頃の面影は、もう微塵もなかった。
刀身めいて真っ直ぐな鼻筋は、すでに立派な大人の男のものだ。
凛々しい眉も、形は良いが細すぎない顎も。
喉の突起も。
そして、今の王子は、神々しいまでに美しかった――
ああ……。
こんな風にして、アルトナル様を間近につぶさに見続けるなど、一体いつ以来のことであろうかと。
シグルドは、しばし感慨に耽る。
すると、突如、王子の肩が大きく痙攣した。
麗しい寝顔が見る間に苦悶に歪む。
激しく呻き声を洩らしながら、アルトナルが悶えた。
悪夢にうなされておられるのだと、シグルドも、すぐさま気づく。
「王子、いかがされたのです。目をお覚ましください、アルトナル様!」
片手でアルトナルの肩を掴み、シグルドは大きく揺らす。
悪夢から引き戻そうと、アルトナルの耳元で幾度も呼び掛けたが、それでも王子は目を覚まさない。
「王子よ…アルトナル様、アル……!」
ついに、シグルドが幼い頃の呼び名を口にした刹那、王子がうっすらと瞼を開けた。
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