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「お前、本心ではどう思う、我と剣を交えて。嘘は一切つくな、誠の心のみを答えよ」 「私は最初から、本心のみを申し上げております。アルトナル様におかれましては、前と変わらぬ、いえ、これまで以上に胆力に満ちた太刀筋。まさしく鬼気迫るほどに」 「やめろ、シグルド、それは……そんなものは」 「アルトナル様……?」 「そのようなものは、必死のあがきぞ。どれほど、どれほど我が焦りを覚えているか、お前は知らぬ。この腕が胸が脚が、日々細っていくようで……とても堪らぬのだ。じっと座ってなどおれぬのだ」  確かに――  男の器官を失うと、みるみるうち、なよやかに女らしい様子となる者もいると聞く。  特に、異国の娼夫や吟者など、少年時代を閉じ込めるため、幼くして男を失わされた者は、それが顕著だ。  無論だからこそ、そのような「処置」を施されるのだろうが、またそれゆえに、「その部分を失った男は女々しく弱々しく変化する」と。  巷ではそう解されることも多いのだろう。    だが、あの薬師によれば、必ずしもそのようではないらしい。    王子は、男陽をほぼ失いはしたものの、子種を有する部分については、さほど多くを切り捨てずにすんでいた。  しかも、王子はとうに成人し、すでに大人の男となっている身だ。     
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