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よって、その身体が目に見えて弱々しい様子になることは、まずないであろうというのが薬師の見立てだった。
そして、そのことは、アルトナル様とて、よくご存じのはずなのに……。
「王子よ、そのように憂うことはないと、薬師もそう言っていたではありませぬか。なのに、なぜ」
「『なぜ』? だと……あのように、あのようにおぞましき傷を負った我に、お前はそれでも『なぜ』などと問うのか、シグルドよ?!」
もはや、それ以上は口にすることすら堪らないとでもいう風に、アルトナルが両手で顔を覆い、ガクリとうなだれる。
そして、傍に佇むシグルドこそ、その胸を罪悪感に引きちぎられていた。
息をすることすらも、もうままならぬと……そう感じるほどに。
だがそれでも、打ちひしがれる主に、かつての乳弟に。
すこしでも励ましをと、アルトナルの肩へ指を伸ばした。
その瞬間、アルトナルが激しくおののき、シグルドの手を振り払う。
「やめ…よ! 我は、我は『憐み』など要らぬ」
「アルトナル様、憐れむなど……」
「ならば『自責』か、それとも『負い目』か。シグルド、我は許さぬぞ、そんなものに苦しむなど、お前には許さぬ。あまつさえ自死を願うなど、そんなことは決して許さない!」
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