53人が本棚に入れています
本棚に追加
スードリアント戦士の重々しい太刀筋を流れる動きで避けながらも、王子はぬかるみに足を取られがちな馬の様子に、やや動きをもたつかせていた。
危ない……!
シグルドが脳裏でそう叫んだ刹那。
往なし損なった敵の刃がこぼれて、王子の腰に刺さった。
シグルドは王子の名を叫びながら駆け寄り、その身体を支えようと腕を伸ばす。
だが、その指先をすり抜けて、王子アルトナルは泥まみれの白馬から落ちた。刺さった刃の上に覆いかぶさるようにして、その身体は地に打ち付けられる。
王子の相手をひと太刀になぎ倒し、シグルドは馬から降りた。
急ぎ抱き起こした王子の黄金の瞳には、鷹の目の輝きが残ってはいたものの、敵の刃は、王子の腰から脚の付け根に向かって、長く身体にめり込んでいた。
「薬師を……早く!」
おびただしい出血を見せる王子を肩に担ぎ上げ、騎士シグルドは、愛馬の鞍に飛び乗ると、急ぎ戦場から駆け出した。
最初のコメントを投稿しよう!