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従軍の薬師は、まだそれほどの歳ではなかったが、腕前と知識は群を抜いていると評判の男だった。
無論、戦いのさなか治療にあたるには、それなりの体力と胆力を要する。
どれほどの名医であっても、老体の薬師では、いくさ場に伴うことが難しいのは言うまでもない。
その点、この薬師は、精鋭である近衛兵たちと並ばせても引けを取らぬ背丈、体格をしていた。
加えて若いとあれば、まさにうってつけだ。
その薬師は、シグルドが幕屋に連れ戻した王子を一目見るなり、鋭い声で「人払いを! すぐに」と、鋭い口調で命じた。
そうやって手伝いのための小姓すらも幕屋から追い立ててしまい、見かねたシグルドが不審の声を上げると、薬師は、
「王子の治療の手伝いは貴殿が行うのです、近衛の長シグルドよ!」と切り返した。
そして薬師がそう告げた理由を、シグルドも、すぐさま知ることとなる。
王子に刺さった刃は腰骨を砕くことなく止まってはいたが、下腹部に著しい深手を負わせていた。
おびただしい流血を止めるために、薬師はアルトナルの陰茎を、ほぼ根元に近い場所できつく縛り上げる。
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