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無残な死に方をした兵など無数に見てきた。けれども。
目の前で行われる治療には、さすがに血の気が引いて、目の前がすうっと暗くなった。
「何をしている、近衛の長よ、早く火種を!」
薬師の叱責に、シグルドも、すぐさま気を引き締めた。
そして火を点けておいた蝋縄を、薬師に手渡す。
傷を焼かれる痛みが、王子を襲った。
咥えた絹布を噛み裂かんばかりに軋ませて、それでも押し殺しきれない呻き声を発しながら。
王子アルトナルは、ついに気を失った。
*
傷が元の発熱も、腕の良い薬師の治療と若い男の体力とで乗り切り、王子は数日で床から起き上がった。
部族スードリアントの暴動は、とうに抑え込まれており、アルトナルは、勝利を土産にすぐさま帰路につく。
まったく万全とは言えない身体をおして、気丈にも、自身の愛馬に跨り、真っ直ぐに首筋を伸ばして。
王子アルトナルは、見事な凱旋の雄姿を、民に臣下に見せつけた。
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