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王城への帰還の前に、王子は、近衛の長シグルドと従軍の薬師のみを呼び寄せて、密談の場を設けていた。
他の者たちの前では、ただ気力のみを振り絞って、「我が身が負うたはかすり傷だ」と言わんばかりの振舞いを見せていた王子アルトナル。
今、事情を知る二名の前でだけは、疲れ果てた心身を取り繕うことなく晒し、毛皮を敷き詰めた長椅子に力なく横たわっていた。
「お前たちに、言っておくことがある……」
途切れかけた気迫を繋ぎとめるように奮い立たせ、アルトナルが声を絞り出した。
「こたびの我の受傷について、他言することは一切まかりならぬ」
「アルトナル様……何をおっしゃいます!」
主の前、静かに視線を伏せていたシグルドが、堪らずこう発して顔を上げる。
それをアルトナルが、
「黙れ、近衛」と、一喝した。
「騎士と、そして医師としての誇りにかけて、我に誓え。命尽きようとも、このことは他言せぬと」
「畏れながら、王子よ」
面を伏せたまま、ごく低く、薬師が口にする。
「それは御父君にも……王ラクナルにも『仔細は告げるな』と。そのような仰せと解して宜しゅうございましょうか」
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