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「そろそろ帰ろうか……」
表に出ると、いくぶんか小降りになっていたが、まだまだ雪は降り続いていた。
「河原を歩きたいな……」
由美の提案で、川沿いの道を帰ることにした。少し面倒だが、雪の中を寄り添って歩くのも、この季節ならではだ。
普段、球技で賑わっている河原は、一面の銀世界。足跡一つ無い雪野原が広がっていた。
ふふふ……
ボクの腕に自分の腕を絡めた由美が、ぶつぶつつぶやきながら、クスクス笑っている。
「何だよ、気持ち悪いな……」
久しぶりの独り言だ。
「なんでもない……」
「気になるから言えよ……」
由美は足を止め、ボクの顔を見た。
「友だちが迎えに来たのよ……」
背中に寒気が走った。
由美は相変わらず、クスクス笑っている。
「友だちって誰だよ……」
馬鹿なことを聞いていると思うが、声が震えてしまう。
「誰って、みんなだよ……」
由美はボクの前に躍り出て、思い切り両手を広げた。
ボクは体を震わせ、反射的に後ろを振り向く。
当たり前だが、雪の上にはボクの足跡があるだけだ……
ちょっと待て、ボクのだけ?
「おい、由美……」
呼びかけたのに返事が無い。
再び前を見たボクは、その場で凍りついてしまった。
そこにいるはずの由美がいないのだ。
その代わり、真っ新だった雪野原が、無数の足跡で踏み荒らされていた。
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