虚空

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「むかーし昔。あるところに光り輝くお星さまがおりました。そのお星さまは暗い夜を照らすお仕事をしていました…… 」 時代錯誤な絵本の読み聞かせ。 懐かしく思い、廊下を歩いていた足を止める。 「毎日明かりを灯しに行くのですが、すぐに消えてしまいます。お星さまは考えました。 たくさんのお星さまの仲間と一緒に照らそうと…」 そこまで聞いて、扉から見える室内から目を伏せた。 目的を果たしに行かなければならないからだ。 今日は、終わりそして新たに始まる。 あの日、空はひたすら青かった。 淀みなく、一筋の光が真っ直ぐ伸びている。 何処までも飛んで行ける気がした。 それなのに 何故、だろう。 一瞬で真っ暗闇とはこの事。 小さなキッカケなのか、どうしてこうなったのか何も知ることのないまま数秒で落ちる。 ただ、悟ったのは確実に助からないということ。 パニックになりかける頭を必死に理性で抑える。 例え自分が落ちても、せめて被害を少なくと考えるのは人間というものだ。 どんな人でもその一瞬頭で必死に考えるだろう。 ただ、瞬きの間なのだ。 間に合うはずがない。 この世はコントロールが効かないもので何も分からぬまま落ち、星のカケラが残骸となる。 そして星たちは、故郷の宇宙(そら)へと舞い上がる。 今日もあちこちで、宇宙へと星が消えて行く。
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