第1章

13/119
前へ
/119ページ
次へ
 地縛霊である彼の立場に、 ある種の同情さえ湧きでてきた。  かなり強い執着が、 彼をそこに縛り付けているのだろう。 彼を追い払うのではなく、 むしろ成仏させる方が良いのじゃぁないだろうか? そう思ったので、 私は彼に向って両手を合わせ、 一心不乱に拝んだ。 もちろん、 詳しい念仏は知らないから、 南無阿弥陀仏≪なむあみだぶつ≫、 南無阿弥陀仏、 南無阿弥陀仏、 南無阿弥陀仏……と繰り返し何度も唱えた。 何十分間後、 いや何分間後かに恐る恐る目を開けると、 彼は跡形もなく消滅していたのだ。  私は、 この経験から多くの「人生訓」を学ぶことができたような気がする。 時には「物事を相対的に見るのも必要だ」、 といえるのじゃあないだろうか? 「相手の立場に立ってみる」のも生きていく上での重要な要件だろう。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加