第1章

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 このコンプレックスが、 悪夢を私に見させるのだろうか?  その筆舌に尽くしがたい悪夢とは――  蔦≪つた≫が我が物顔で伸びて壁全体を覆っている喫茶店へ、 妻が私を誘った。  そこは、 とても陰気で小さな喫茶店だった。  何か重大な話があるような、 深刻な顔をしたまり子。 そんな深刻な顔を私が見たのは、 この時が初めてであった。  店の中に入ると、 私は、 なぜか落ち着きなくキョロキョロと周囲を見回した。 考えられないほど、 とても薄汚い喫茶店だ。  店内は、 寒いほどにヒンヤリとエアコンが効いているが、 この寒さは、 エアコンのせいばかりでなく、 この店に漂う冷気も作用しているように思える。
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