第1章

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 二人は、 薄暗くて陰気な四人掛けの椅子に差し向かいで座った。 店内は外見と同じく、 いやそれ以上に老朽化している。 多分、 オープン以来一度も改装していないだろう、 と私には思えた。 おぞましい不潔さを無視しようとしたものの、 私は、 何度も何度も体がこわばるほど、 全身が打ち震えたのだ。 なぜか、 私はすごく緊張しているようだ。  椅子に張った布が所々ほころびているのを、 目敏く見つけた。 (なぜ、 妻は、 こんなにも不潔な喫茶店に私を誘ったのだろう?)  不潔さが原因だろう、 喉にヒリヒリとした痛みが走った。
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