第1章

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 本来なら、 この時間帯には帰社する前の営業マンで、 にぎわっているはずなのに……。 しかし、 お客は私達二人だけだった。 カウンター席も含めて、 四十四席もあるにもかかわらず……。  汚れてシワだらけの灰色のカーペットには、 何かが蠢≪うごめ≫いている。 (何がいるのだろう?)  目をこらして観察した私は、 気持ち悪くて思わず大きな悲鳴をだした。 「ギヤーアアアアアアアァァアアアアアアアアアアアアァァアアアアア……」  薄暗い中をゴキブリが、 触覚を動かして辺り構わず、 ゾロゾロ這い回っているのだ。 しかも、 体長が、 約七十ミリメートルもある大型マダガスカルオオゴキブリだ。 おびただしい数の大きなゴキブリを目にして、 胃液が逆流して吐きそうになった。 同時に、 悪寒が背筋を走ったのだ。
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