第1章

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 山陰本線鳥取駅近くにある毎朝立ち寄る薬局で、 苦いカフェインが百五十ミリグラムも入った眠気覚ましのオールQを、 可愛い小さなストローでチュウ、 チュウ、 チュウ、 チュウ……とネズミが鳴くような音を立てて一気に飲み干す。 相変わらず舌が痺れそうなほど苦いが、 この味こそがカフェインだろう。  まだ店の開店までに、 かなり時間があるにもかかわらず、 私は一気にハイテンションになるのだ。 (今日も頑張って仕事に励むぞ! この俺が、 会社を背負っているのだから!)  そう心の中で叫びながら、 駅から一キロほど北にある某チエーンストアの鳥取店へ、 強烈な寒風が頬を打つ中を、 胸を張り自信にみなぎった大股で歩いて行くのだ。 自惚れだと充分自覚はしているが、 常々、 自惚れも出世の必要な条件だ、 と心の底から固く信じている。
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