第1章

4/119
前へ
/119ページ
次へ
 心臓と胃が悲鳴を上げそうなぐらいに、 緊張を強いられる毎日の連続だが、 その緊張を頭の天辺からつま先まで受けるのが、 とても心地いい充実感、 ひいては達成感を私に味わわせるのだ。  店の裏口の商品搬入口近くにある警備室前に置かれた従業員名簿欄に、 四百四十課主任 山下 和夫≪やました かずお≫の名前と入店時間を記入して、 商品搬入以外従業員はエレベーターを使うのを禁止されているから、 九階にあるロッカー室まで階段を上り、 冬の制服である紺色ブレザーに着替えて四階へ降り、 私専用デスクの椅子に座る。  当然、 まだ朝の七時だから、 課員は誰も出勤していない。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加