16人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
そうして俺たち2人は凍結実験の被験者になった。
小型シェルターの中にカプセルが2つ。
数百年は保存できるようにと、核を使った小型エネルギー装置をつけてあるそれはまるで小さな宇宙船のようだった。
「本当にいいんだね?もうもどることは出来ないよ?」
「サカキさんを信じています。大丈夫です。こわくない」
彼女はけなげに微笑んで手をさしだしてきた。
「眠る前に、握手しましょう。そしておきたら、もう一度手を握ってくれますか?」
俺はこみあげてくる彼女への愛をぐっと押さえて手を差し出した。
暖かく小さなこの手をまもりたい。
今あるのはその気持ちだけだった。
「おれも起きたら君に言いたいことがあるんだ。目が覚めたら、聞いてくれるかな?」
こくんと無言でうなずくと、彼女はカプセルに入り目を閉じた。
俺も続いてカプセルに入る。
たった数日の実験だ。
自動覚醒ではなく手動での覚醒だから、様子を見て、1週間から1か月の間で一番状態が良い時に目覚めさせてもらう手筈になっていたのだ。
機械が動き始める。俺は彼女をみた。
彼女もおれをみていた。
(おやすみなさい)
二人同時にそう呟いて笑い合った。
最初のコメントを投稿しよう!