変容

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変容

今日は特別な日だ。 引きこもりで陰険な魔女も、ぎゃーぎゃーと頭の上から喚く龍も、足元や肩、耳元にまとわりつく噂好きの精霊も終わる。 紫の空は見飽きた。 乳白色の川はつまらない。 人魚しか愛さない海は憎い。 嫌だ、嫌だ、こんな世界は終わればいい。 僕のまわりの地面がキラキラと緑色に輝く。 この魔法式を完成させるのに三年もかかった。 この緑色の光が銀色に変わったら世界は全てを忘れるんだ。 魔女は自分が魔女だった事を忘れ、精霊は言葉を持たない草花になる。龍は人間よりも小さな鳥に、人魚は無力な魚になる。 空は僕の好きな青がいい。 川は透明がいい。うるさいから色なんていらない。 もうすぐ黄金色の夕日に包まれる。それも最後だ。みんな変わってしまえばいい。 そして海は愛した人魚を失い、僕の悲哀を知ればいい。 海が歌さえ歌わなければ、海が人の姿を真似なければ、海が僕を愛してくれたなら……。 僕のまわりの地面が銀色の光を放った。 今日は特別な日だ。
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