姫野荘

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そう言った瞬間、不意に頭を横から優しく引き寄せられた。 逆らう事なくその力に身を委ねて、隣に座る朝比奈さんの肩にもたれ掛かる。 そして、優しく私の髪を撫でる大きな手の感触を感じて、そっと目を閉じた。 すると。 「来年も、再来年も、な」 聞こえたのは、どこまでも優しい約束。 その言葉に微笑みながら頷いて、ゆっくりと目を開けた。 見えたのは、精悍な顔で私を見つめる大好きな人。 視線が合った瞬間、ふっと小さく笑って私の頭にキスを落とした。 愛が優しく注がれて、胸がいっぱいになる。 ギュッと無意識に朝比奈さんの服を掴んでいた私の手を朝比奈さんが優しく包んでくれた。 幸せだと思う。 この時間がとてつもなく。
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