恋にはすこし届かない

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 俺は、明日から切り替えてハタラケよ、の意味で言ったんだが。  どう間違ったか、リオの解釈はこうだ。  「忘れさせてください」  涙に濡れた瞳ですがられたら、まあいいか、なんて思ってしまったのだ。  この状況で、なぜか押し倒されていたのは、自分だったというのに。  想定していなかったと言えば嘘になる。  リオとならそうなってもいいという気持ちがあったから、家に連れてきたんだと冷静に分析出来たのは、三回くらいやった後だったが。  リオは基本真面目で、人懐っこく見た目も申し分ないので社内外ですこぶる評判も良い。  そんな彼について井上課長(俺の事だ)の秘蔵っ子などと揶揄されて、満更でもなかった。  ただ、ソウイウ目では見ていなかった。  押し倒される瞬間までは。  あの時。  自分の背中が冷たい床に着いた時。  リオは俺の背中を支えていて、ゆっくり床に着地させた。  こいつ、真面目だな。と思った。  それで、たったそれだけで、それ以上も進んでいいと思ってしまった。  そんな始まりだから、好きだとか、そういうのはまだわからなかったりする。  この期に及んで可笑しな話だが、一緒にいて楽しい、居心地がいい、おまけに欲情するんだから、これはもう間違いようが無いんだろうが。     
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