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恋にはすこし届かない
「痛ってえって!」
両手首をきつく縛られて、奏多(かなた)はリオを睨み付けた。
「あ、ごめんなさい」
しかし、リオは作業する手を止めない。
彼の明るい栗色の髪が、天井でくるくる回っている趣味の悪いミラーボールの光を反射して輝いている。
その少し長めの前髪をかきあげると、神秘的なグレーの瞳がこちらを見て微笑んだ。
柔和な相貌のリオは、そういう格好をしたら西洋の絵画に出てくる美しい天使のようだった。
確か祖父がフランス人のクォーターだとかで、背も高い。
でも今の彼はというと、奏多をネクタイで縛り上げてポールに固定する、悪魔のような男だ。
「ごめんなんて、ぜってー思ってねーだろ」
奏多が毒づくと、リオはまた、ごめんなさい、と軽く応えた。
そして白い頬を赤らめて、わざわざ背の低い奏多の高さに合わせて屈んで、上目遣いで続ける。
「だって僕、奏多さんが苦痛に耐える顔にすごく興奮するんです」
「お前……。一応俺、お前の上司なんだぞ」
「でも今は、ホテルに連れ込まれて、僕に縛られてトイレにも行けない、かわいい恋人じゃないですか」
天使のような綺麗な笑顔で、リオはのたまう。
こいつ、思ったよりヤバイ。
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