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今日は、僕達にとって特別な日。心臓はバクバクいっているし、手はビッチョリと汗をかいている。程よい静寂に包まれた幕の向こう側は、僕達が造り出す夢を今か今かと待っているのだろう。
ニ分前の声が耳に入り、僕は床に貼ったバツ印の上に立った。ふっと隣を見れば、薄暗い中でも彼女の顔を確認できた。目が合い、どちらからともなく笑みがこぼれる。ここまで来たのなら、あとは楽しむしかない。やりきるしかないのだ。
僕達が造る夢は、偽物だらけだ。夜空の星は電球の集まり。空だって、歩けば端に行き着いてしまう。それでも、駆け抜ける。偽物の空を本物にする為に。静寂を引き裂くように、ブザーの音が響き渡った。幕が今、ゆっくりと上がっていく。さあ、行こう。
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