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「頑張るしかないよ、ここまで来たら」
「そうね」
私はスケートシューズを履いて、入念に試合前の練習をし、友樹と呼吸を合わせるように踊り、ダンスのチェックをした。
いよいよ、試合がはじまった。
凄ざまじい緊張感。
それは他の選手も同じだけど、最後に必ず優勝すると決めたプレッシャーがさらに緊張を高める。
「固くならず、いつも通りで。ね、友樹」
「うん。もう、これまでやってきたことを最後に出すだけだよ」
「そうね!」
いよいよ最後の出番がやって来た。
「行くわよ友樹!」
「よし!」
最後の演技の時間が始まった。
選曲した音楽は、ヴィバルディの「四季」より「冬」。
まずはツイフトリフト。
私は際どい回転を決めて、友樹のもとへ。
さらにリフト。
着地の時にうまく捻りを効かせることが出来た。
そしてスロウジャンプ。
友樹の力で私は高く舞い上がる。
かなりうまく決まった。
だがサルコウとループだけでもよかったのに、優勝するために、フィリップやアクセルにも挑戦したのが裏目に出て、着地に少しモタついた。
「焦るな!」
友樹の声が聞こえた気がした。
「そうね!」
私も心の中で叫んだ。
その後のスピン、シークエンスはうまくいった。
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