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「それにしても、最初のジャンプの高さ、捻り、凄かったですね。まるでペアスケーティングのツイフトリフトやリフト、またはスロウジャンプのようなアクロバティックなジャンプで度肝を抜かれましたよ。やはり元々ペアスケーティング出身の方ですから、一味違う凄いジャンプでしたね」
「ハイ、やはり長いこと練習してきた動きが出たのかなと思います」
「ペアを組まれていた、婚約者だった藤沢友樹さんが亡くなられてからの異例のソロ転向でしたが、大変でしたね」
「確かに慣れないところだらけで、かなり戸惑いながらの挑戦だったんですが、でもいつも、支えられて練習することが出来ましたから、最後の最後まで前向きに頑張ることが出来ました」
「長い間、本当にお疲れ様でした」
「ハイ、どうもありがとうございました」
試合が終わって、私は一人、競技場の外に出た。
外は雪が降っていた。
あの時、友樹とここまで歩いてきた。
この競技場を下見に来た。
その帰り道に、二人で手を繋いで、雪の結晶を見た。
私はスマホを取り出し、あの時撮影した雪の結晶の画像を見た。
その時もう一枚撮った画像には、ちょっとおどけた笑顔の友樹と、私の笑顔のツーショットが写っている。
「ゴメン、友樹、最後に優勝出来なかったよ。でも精一杯頑張れたよ、あなたのおかげで」
笑顔の友樹に私は報告した。
「今までずっと支えてくれて、本当にありがとう」
私は笑顔の友樹にそう話しかけてから、スマホをポケットにしまい、雪の降る道を、一人歩き始めた。
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