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雪の結晶
○
雪降る夜。
二人で、雪が降り積もる帰り道を歩く。
すると冷たくなった友樹の黒いコートに、ボタン雪が降り積もっていた。
私は持っていたルーペでその積もった雪を見て、そこに六角形の雪の結晶を見つけた。
「わあ、キレイ」
私は興奮して見つめた。
「こういうの初めて見たよ」
友樹も、コートをこっそりと脱いで、もの珍しそうにそれを見つめた。
「記念に持って帰りたいね」
「溶けちゃうんじゃない?」
「そうね、アクリルとかガラス板があったらよかったんだけど。じゃあこのまま写真に撮っておくわ」
私は、スマホのカメラを目一杯ズームインして、雪の結晶を撮影した。
「こんなの見たことなかったから、見れてなんか嬉しいよ」
「雪が降ってくれたおかげね」
しばらく私は、友樹とふたり並んで手を繋ぎ、雪の結晶をずっと見つめていた。
○
今日は、いよいよ大事なフィギュアスケートの大会の決勝の日だった。
ここまで二人で残った以上、負けるわけにはいかない。
必ず優勝してみせる。
これが最後の引退試合だから。
昨日のショートプログラムはうまくいき、2位に着けた。
「今日のフリースケーティングで、必ず優勝するわよ、友樹」
と友樹に声をかけた。
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