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人類は、3000年程前に滅亡した。
何がきっかけだったかなんて知らない。知りたいとも思わない。ただ、邪な人間たちが邪な理由で戦争を始めたらしいという、大雑把な情報しか私には入ってこなかった。
リリーと私は当時、老いた人間たちを補助する施設で働いていた。
私たちは戦闘型ではなく介助型アンドロイドだったため、戦争という無用な情報は入ってこなかった。施設のテレビジョンにはエンターテイメント性の高い愉快な番組と、自国の正当性を論ずるプロパガンダばかりが流れていた。私たちはそれを見ながら、老人たちと楽しく暮らしていた。プログラムに則った笑顔を浮かべていた。
しかしある日、施設は何の前触れも無く爆撃に晒された。
天井の吹き飛んだ部屋から空を見上げると、戦闘機が空を駆けるのを見た。一瞬で瓦礫と化した施設内に人間の生存反応は無かった。直撃を受けたリリーのボディも大部分が破損したが、私はその破片を拾うと転がっていたバイクに乗り込み、逃げ出した。
惑星『キイラ』の方角へ、と言ったのはリリーだった。
「……リリー。つまらないわ。何か話をしてよ」
障害物も何も無い、退屈な荒野を運転しながら私は呟いた。
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