第一章

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 全てを飲み干してしまいたい衝動に駆られつつもそれをなんとか理性で留めた柊鬼は、鬼歯をまたゆっくりと抜き、突き立てたそこを慰めるかのようにベロリと舌で舐め上げた。 「んっ」 「はい、お疲れさん」  与波から手を離し親指で唇を拭うと、彼は乱れた着物を正しながら此方を睨みつけてくる。 「ンだよ、痛くなかったろ?」  言いながら彼の首筋を覗き込めば、やはり鬼歯を突き立てた筈の首筋には傷が一つもない。 「与波一族は鬼に血肉を与えるよう血の印が刻まれてンだ。おかげで簡単に貧血になるようなやわな身体もしてねぇし」  鬼の相手をするには便利な身体だよな、ほんと。  クスクスと笑いながらそう言うと「貴方って方は」と与波は脱力する。 「まぁ肉まで食われないだけ良しとしましょう」  さっ、冷めないうちに朝食も食べてくださいね。  気を取り直すように彼は立ち上がり襖を開ければ、これでもかというほどの陽が入ってくる。それに柊鬼は一瞬瞳を細めるも、すぐに返事をし同じように立ち上がったのだった。 「そういえば、」  朝食の後、与波は柊鬼に温かいお茶を渡しながら言う。  だがその声音はしっかりしており、そういえばと言いつつも朝食後に話そうと決めていたのだろう。柊鬼は視線で何だよと返せば「その様子だとお忘れですね」と彼は苦笑した。 「明日は柊鬼様の生まれた日、誕生日ですよ」 「あぁ、もうそんな時期か」     
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