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渡されたお茶をズズ、と吸い込む。
彼の身体に流れる血よりは不味いけれど、きっと他の人間よりも上手に淹れてくれているのだろう。比較するものがないので分からないが、柊鬼はそう思っている。それでもまぁ不味いのだけれど。
「頭を下げに古角一族がワラワラとやって来るっつぅわけだ」
「その表現は如何なものかと」
「あいつらだって好きで頭を下げに来てるわけじゃねぇだろ」
再度ズズ、とお茶を吸い込めば、そんな悲しいことを仰らないでください、と与波は言った。
「鬼は神にも等しい存在です。貴方様が生まれたことは古角一族にとっては誇りなのですよ」
「・・・・」
「その証として鬼は古角一族の当主となり、毎年生まれた日に古角の人間は挨拶をするようになっているのです」
ですから、と続ける与波に、あぁもういい、と空いている手の方を無造作に振り、言葉を遮った。
「別に悲観してるわけでもねぇから。当主という立場に座する意味を理解出来ていなかったガキの頃とは違ぇんだ」
「柊鬼様・・・」
どこか苦しげな表情をする与波。きっと柊鬼の幼き日のことを思い出しているのだろう―――あんな過去はもう忘れてしまえばいいものを。
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